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【ラ・ラ・ランド】Someone In the Crowdの中盤から盛り上がってく展開ってEDMみたいで気持ちイイよね

「ベイビードライバー」といい「ドリーム (Hidden Figures)」といい、サントラが超キャッチーな作品がどんどん出てくる2017年だけど、今年の映画の劇中歌で1曲お気に入りを選べということになると “Someone In the Crowd” を真っ先に推したくなる。

 

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ラ・ラ・ランドでミア達がパーティへ出かけるシーンの曲。

 

www.youtube.com

 

この曲は全体通して明るくてポップでノリノリな雰囲気でとっても楽しい。特に、一旦静かになってから (上の動画でいうと1:04〜)ウッドベースやピアノやフルートが入ってじわじわ盛り上げてくとこが好きだ。盛り上がりがピークになって「ジャンッ!!」ってなってから、軽快なリズムのフレーズを反復させる流れに自然にノれる。
 
 
……という風に曲の流れを追いかけていて「ハッ!!」と気づいた。
 
 
この展開、EDMにそっくりじゃない!? と。
 
 
「EDM?? パリピ御用達みたいなアゲ⤴︎アゲ⤴︎ 系クラブミュージックと関係があるの? これジャズでしょ? 」と思うかもしれないけど、いやいやとっても良く似てる。
 
音を徐々に大きく派手にしながらじわじわ盛り上げていって、高みに達したところで休符がバシッ!! と炸裂して、シンセリフのループが高らかに鳴り続ける、というのがEDMの定番の展開*1

曲がいちばん盛り上がるところで、歌のパートじゃなくてリフ主体のインスト・パートを持ってくるのが特徴というかキモというか必殺武器だ。具体例はこんな感じ。
 
www.youtube.com (0:45あたりから盛り上がってく) 
 
www.youtube.com(1:20あたりから盛り上がってく) 
 

この楽曲展開は、クラブやフェスで、観客が知らない曲でもみんなが盛り上がれるようにパターン化された定石として確立されている。それが確かな求心力に繋がっていることは、上記の2曲の再生回数を見てもらえば伝わると思う。
 
EDMの人気は文化や言語を超えて広がり、このジャンルを中心に据えたイベント「ULTRA MUSIC FESTIVAL」はフロリダを起点にスペイン、ブラジル、アルゼンチン、韓国、南アフリカ、コロンビア、タイ、マカオシンガポールそして日本へと進出して行ったー。
 
 
……で、ラ・ラ・ランドに話を戻そう。
"Someone In the Crowd” ではゆっくりじっくり高揚感を煽り立て行くパートは、いろんな楽器の音が徐々に重なり合って一緒に上昇曲線を描いていくことでワクワク感を膨らませていく。そしてEDMにおけるシンセ・リフの代わりに、この曲では「ド!  ド! ド〜レ〜ミ レ! レ! レ〜ミ〜ファ」のフレーズが炸裂し、楽器が舞い踊る。
 
ラ・ラ・ランドの劇伴を手がけたジャスティン・ハーウィッツが、今風のクラブミュージックを意識してスコアに取り入れようとしたのかは定かでない。映画で描きたいシーンに合わせて曲を組み立てたら、偶然この流れになったのかもしれない。
 
いずれにせよ言葉や文化を超えて届くクラブミュージックとの共通点があることは、この映画が持っている、ミュージカルに馴染みがない人でも虜にしてしまう求心力を強く後押ししていると思う。
 
劇中映像バージョンの動画も観てみよう。
 
 
 
曲がじわじわ盛り上がってくところは、ミアがベッドで横になって想像膨らませてるシーンになっている。期待感が胸のうちでロマンチックに高まっていくところだ。
 そしてサントラ収録版とは違って映像では、ピークのところでちょっと焦らしてから「ジャンッ!!」ってなる。こういうズラしもEDMのPVでよくある(ちなみに僕は、この4人のうち誰がいいかで言ったら、迷わず黄色のお姉さんを選ぶぜ。ホットじゃん)。
 
 
EDM的展開の後、ミアが鏡と向き合っているシーンでこの曲はまた静かになる。そこからは流麗なストリングスがWest Side Storyの「Tonight」序盤みたいにふわりとしていいなぁと思った。そしてフィナーレでまたドカーン˜!! と盛り上がるのがたまらない。
 
 
そういうわけで "Someone in the Crowd" は、イマドキの流行りの音楽に通じる魅力がありつつ、ハリウッドの古き良きミュージカルのスコアも彷彿とさせるモダンでスマートなポップ・ソングとして「観るもの全てが恋に落ちる、極上のミュージカル・エンターテイメント」というキャッチコピーを見事に体現している。
 

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※今回のネタは、8月頭にcinemactifのポッドキャストにおたよりで投稿した話が元です (イワキと名乗っていました)。おたより、読んでいただきありがとうございました!!
 
 

*1:

カルヴィン・ハリスの歴史を紐解く記事が詳しい。