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【クレイジー・リッチ!】レイチェルの赤いドレスって紅包 (アンパオ)の比喩だよね

 僕は小5から中1までシンガポールに住んでいた。自分が育った場所が経済発展して映画映えするスポットとして躍動しているのはなんだかとても嬉しい。

 

 シンガポール滞在中は日本人小学校・中学校に通い、普段はNHKの衛星放送を観て過ごしていたので、異国の文化に漬かる・浸るというよりも日本人コミュニティの中で生活するに留まっていた。とはいえ学校の授業ではシンガポールの文化や歴史を扱っていたので、映画「クレイジー・リッチ」の中に登場するセリフでも「日本で生活していると伝わらないネタ」に気づくことができた。それについてちょっと取り上げたい。

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 NYを出発する前に、レイチェルの母は赤いドレスを勧める。幸福と富の象徴として。そしてファーストクラスでシンガポールに着いたレイチェルが友達のペク・リン (ホントいい子だよね)邸に遊びに行って家族と一緒ににご飯を囲む。そのとき、赤のドレスについて「君が封筒ならいいけどね」と からかわれてしまうシーンがあった。

 

 この封筒が指しているのは手紙を出すためのものというより、中国のご祝儀袋/お年玉袋に相当する「紅包 (アンパオ)」だと考えられる。

 

theryugaku.jp

 

 

 アンパオに入るのはお年玉すなわち子供のお小遣いだったり、ご祝儀だったりする。「君が封筒 = アンパオならいいけどね」というセリフは、レイチェルの彼氏: ニックの家が不動産王として保有する資産に比べたら、レイチェルの資本力は「子供の小遣いか、紙幣だとしても数枚の価値だろ?」と言っているような揶揄として深読みできてしまう。

 だからこそ、そんなレイチェルの大逆転劇としてイイ映画だなぁと思って観ていた。


 あと、ニックの家がまさにそうなんだけど、家柄というものをとてもとても重んじている価値観について。どこの国にもそういう考えを持った人というのはいるんだろうけど、シンガポールが辿った歴史と、中国人の「血縁」を重んじるコミュニティとについてちょっと触れておきたい。

 

 イギリスの植民地だったシンガポールは、東南アジア有数の貿易拠点として開発・発展が進み、19世紀には中国から出稼ぎ労働者が多く移り住むようになっていった。中国と一口に行っても福建省広東省・潮州・海南などなど移民の出身地は多岐に渡った。


 移り住んだ先のシンガポールで、中国人は地縁 (出身地)や血縁 (家柄)などを元にコミュニティを形成していった。見ず知らずの土地で仕事を見つけて生活しようとする人が、縁・ゆかりのある同胞であるならば支援できるように、と相互扶助組織を創っていった。この組織・コミュニティは「幇 (パン)」と呼ばれていたらしく、学校や病院の設立などにも関わる大きな団体だったらしい。


 シンガポールにはマレー人やインド人も移り住んでいるんだから、国籍を超えたコミュニティが形成されたわけではなかったの? という疑問も湧いたけれど、英国の植民地政府は「民族別に居住地を指定して、棲み分けてもらおう!!」という政策で統治をしていた。植民地政府は、

  • 民族同士の争いが起きること
  • 民族の壁を超えた組織が形成され、植民地支配の転覆を企てること

を恐れたためである。チャイナタウン、リトル・インディア、ブギスと呼ばれるエリアが今のシンガポールにもある。これらはかつての民族別居住区の名残である。
 そうして棲み分けが進んだ結果、移民した先でも出身国と同じ言葉を話す人たちのコミュニティで固まるようになり、さらに前述の「幇」のような、地縁・血縁を重んじる組織が形成されやすくなったのだと考えられる。

 

 なんかいつになくめっちゃお堅い話になったね。(いつにない方向性というだけであって堅いのは普段からかな?笑)

 

シンガポールは普通に街の景色を撮るだけでも、映画の中に出てきたような煌びやかで活気のある風景を切り取ることができる。とてもいいところだよ。

 映画の序盤では「観光プロモ映像じゃん……」と思わざるを得ないテイストのカットがあったけど、それくらい強くアピールする価値がある素敵な街ってことで受け止めた。

 

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参考: