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好きな映画、音楽について

個人的にベスト平成ソングを選んだ (10曲)

僕は平成元年生まれなので、1989年~2019年に日本でリリースされた曲を対象にベスト選びをするとなると、必然的に「これまでの人生のオールタイムベスト ~邦楽編~」を決めるということになる。90年代・00年代・2010年代それぞれのベストを選ぶのとは違う観点で、「自分のリスナーとしての趣向を決定づけてきた重要な曲」を挙げることにした。そんな感じで、ルールはこちらの企画に沿うようにしました:

 

ongakudaisukiclub.hateblo.jp


それじゃ10曲を紹介!! カッコ内は楽曲がリリースされた年だけど、テキストは出会った順に書いているので前後する箇所あり。

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trfEZ DO DANCE」 (1993)

 うちでは両親が共働きだったので、学校から帰ってくるといつも家には誰もおらず、ひんやりと静まり返っていた。小学校2年生くらいの頃には、放課後に習い事が無い日はMDコンポ (このMDコンポという装置が実に平成ノスタルジックだね) を操作して、聴きたい音楽を再生していた。その中でも特に好きなのがTRFだった。アッパーな音楽にノッて、ベッドの上で飛び跳ねていた。
 今の自分のEDMやトランスが超好きな趣向はこの頃に醸成されだしていたのだと思うし、1人でいる時間を寂しいと思わず、自分なりの楽しみを見つけて生活するような魂の方向性は、幼少期には確立されていたことが今になって分かる。


SPEED「ALIVE」(1998)
 SPEEDは、歌唱力とかダンスとかスキル面以上に、楽曲やパフォーマンスから伝わってくる4人のエネルギーが抜群に強くて大きいユニットだったと思う。だからこそ、スケール感の大きなアレンジで、この世に生まれてきた命の煌き・自分や誰かがこの世に存在して生きていること自体の尊さを歌う曲がとても似合っていた。

 

Ramar「Wild Flowers」 (1999)
 子供の頃、音楽と出会う入り口としてアニソンは間違いなく大きな存在だった。1999年はデジモンアドベンチャーもワンピースも放映開始された年だけど、やっぱりゾイドが好きだったな。この曲のブリッジの「いつでも心を満たすのは 空の青さと風の声」という一節を聴いた瞬間、広大な大地で澄み切った青空に包まれた経験が実際にはなくても、その状況を追体験できて心がざわついてくる。歌にはそういう魔法が宿っている、そんなことを今でも感じさせてくれる曲だ。
 
 
w-inds.TRY YOUR EMOTION」(2002)
 僕は2000年から2002年の間はシンガポールに住んでいた。学年でいうと小5・小6・中1の3年間。滞在中は日本人小学校・中学校に通い、テレビはNHKの衛星放送を観ていた。当時はインターネットがまだそれほど身近なものとして普及しておらず、在住している日本人向けのラジオがSMAPの「らいおんハート」をヘビロテしていたのを覚えている。国民的に大ヒットする存在については準リアルタイムで情報が入ってくる、そんな感じの時間感覚だったと思う。

 そんなシンガポール滞在中の小学校6年生時の2月、ある日NHK以外のチャンネルも観てみたくなってテレビのチャンネルを回したら「MTV」に目が止まった。そこで英米のアーティストに出会ってハマるということも起こり得たはずだけど、僕が観たとき流れていたのは w-inds.TRY YOUR EMOTION」のPVだった。クールで先進的で、学校でみんなが話題にしている平井堅CHEMISTRYとは違った方向性で洗練された音楽が鳴っていた。まるで てれび戦士のように「君を退屈から救いに来たんだ」と画面の向こう側から存在を発信しているように見えた。

 2002年の3月に一時的に沼津の実家に帰った際、近くのCDショップ (当然今はもうない)で「TRY YOUR EMOTION」のシングルCDを買った。それが、自分が初めてお小遣いで買ったCDだった。


BUMP OF CHICKEN「天体観測」(2001)
 上記の「2002年の3月にシンガポールから一時的に沼津の実家に帰った」タイミングで、小4まで通っていた小学校の友達の家に遊びに行った。そのとき「最近じゃ、みんなこれにハマってるんだ」と聞かせてくれたのが、リリースされて1月ほど経ったタイミングのBUMP OF CHICKEN「jupiter」だった。1曲目「Stage of the ground」を飛ばして2曲目「天体観測」をまず聴かせてくれたのだと思う。

 その友人宅の今のコンポで天体観測を大音響で聴いたとき、豊かなハーモニーとスピード感で響き渡るギターイントロに完全にノックアウトされた。これまでとは違う組成の血液を自分の心臓が力強く全身へ送り出し始めたような気がした。
 中学3年間はほぼBUMPしか聴いていなかった。


GOING UNDER GROUND「同じ月を見てた」 (2004)
 高校で軽音楽部に入って、音楽はより身近な存在になった。好きなバンドも増えた。それで高校1年のときに初めてライブを観に行った。近くの大学の学園祭に来てくれたGOING UNDER GROUNDだった。

 そのライブで演ってくれた曲で一際グッと来たのが「同じ月を見てた」だった。この曲って「ロックバンドが4つ打ちビートの曲を演る」フォーマットなんだけど、アゲる・躍らせるという感じじゃなくて、郷愁とか切なさとかに心置きなく浸らせてくれるような、しっとりしたしなやかなビートが鳴っているんだよね。それが歌に本当によくマッチしてる。

 

泉こなた柊かがみ柊つかさ高良みゆきもってけ!セーラーふく」 (2007)
 高校の頃から洋楽をたくさん聴くようになった。同世代の大学生が らき☆すたハルヒを通過している一方、僕はアークティック・モンキーズフランツ・フェルディナンドやクラクソンズが好きだった。で、ロッキング・オンCROSSBEATを読んで「世の中には英米の音楽に関心を持っている人がたくさんいる。僕もその仲間になりたい」と思っていた。
 でも自分が大学に入った2008年って、(たぶん、自分のいた大学がある種の特異点だったのだろうけど)大学生にとって、みんなの共通の話題といえばニコニコ動画だったと思う。カラオケに行ったら誰かが「God Knows」なり「エアーマンが倒せない」を入れていた。当時、自分が抱いた雑な括り方での印象でいうと「オタクカルチャーがメインストリームで、欧米の音楽はそれ自体がオルタナティブ」であることを実感した。
 で、11月に学園祭があって、屋外ステージで「踊ってみた」イベントを結構大きな規模で演ってめちゃくちゃ盛り上がってるのを目の当たりにして、その場のエネルギーの大きさに圧倒された。 
 その「踊ってみた」ステージの中心にあった楽曲こそがが「もってけ!セーラーふく」だった。あのときの学園祭を通じて、前述でいうところの "オルタナティブ" 側に関心を持っていた自分が "メインストリーム" で起きていることの凄さ・すばらしさを正面から受け止めたのだと思う。
 
 
サカナクション「夜の踊り子」 (2012)
 自分が洋楽をたくさん聴くようになったとき、リアルタイムで英国で起こっていたムーブメントが「ニュー・レイヴ」だった。どんな音楽シーンの潮流だったのかを一言で表すなら「ロックバンドが踊れるビートやシンセを取り入れてクラブミュージック側に接近した一方、トラックメイカー達はディストーションシンセや勢いのあるリズムを取り入れてロックのダイナミズムに手を伸ばしていた」ような、異なるシーン同士がお互いに歩み寄るような蜜月関係でダンスミュージックがアップデートされた瞬間だった。ニュー・レイヴというムーブメント自体は2008年頃には下火になってしまったと記憶しているが、カルヴィン・ハリスのアルバム「Ready for the Weekend (2009)」とかからはこの時期の残り香が漂っている感じがして、とてもいい。
 
 さて、「ニュー・レイヴ」とほぼ同時期の2008年前後、日本ではサカナクションやテレフォンズ、80kidzらが日本で「踊れる音楽」をアップデートさせていた。その後サカナクション幕張メッセで単独公演が打てるレベルの大物に育ち、今なお支持とスケールを拡大させ続けている。アルバム「DocumentaLy」の後でどんな新曲が来るかなと楽しみにしていたタイミングで放たれた「夜の踊り子」は、ブレイクしたサカナクションがさらに先へ進んでいける突破力を示してくれた、痛快な一撃だった。
 
 
水曜日のカンパネラシャクシャイン
 世の中、歌を作ろうとする人・作詞する人は、意味とかメッセージとかに心を割きすぎているんじゃないかと思うことがある。そういうことがしたくて音楽をやっている人達だろうからそれはそれでいいのだけど、音楽というのは鳴っているだけで素晴らしいのだ、意味はさておきリズムや語感そのものがエネルギーと快感の奔流を生み出せるのだ、ということに自覚的なアーティストに出会うと「おおっ!!」となる。たとえ歌詞の意味が「北海道来いよ」という6文字に要約できたとしても、それで楽曲の持つ途方もないエネルギーが縮退するなんてことはない。むしろ、意味が単純だからこそ、「意味」という枠の中で楽曲が評価・解釈されることから自由になり、私たちの中で大きな存在として膨れ上がっていく。「シャクシャイン」はそんな曲だ。

 

a flood of circle「BLUE」
 でもやっぱり、歌詞の内容に心が強く突き動かされることってあるよ。人生ままならないことがいろいろあって、思うように前進できていない、どっちが前なのかすら分からない、時間が解決してくれる目処なんて立ちはしない、という状況にあっても、選んできた道のりの正しさを祈りたくなったときに道標になってくれる曲をAFOCの佐々木亮介さんは生み出し続けてきた。その中でも特に「BLUE」が好きだ。

 

というわけで10曲でした。

アルバムも選ぼうかな。選ぶとしたらすげぇ悩むな。