【ラ・ラ・ランド】音楽とシーンのリンクが面白い。
2017年2月末に「ラ・ラ・ランド」を観た。音楽が鳴り始めたり止んだりする瞬間がストーリーを語る役割を果たしているように見えて面白かった。
印象的な3つのシーンについてメモ。
〜超ネタバレしてるのでご注意〜
① 夏。サンプラーで人工的なビートが鳴り始めるところ
セブがキース(ジョン・レジェンド)に誘われたバンドで、初めてスタジオ練習する場面。曲展開が変わるタイミングでシンセ・パッドが押され、打ち込みフレーズが再生される。
セブは戸惑いながらも、うまくついていくようにピアノを演奏し続ける。
違和感を抱きながらも自分をフィットさせてていく。
他人があらかじめ組み立てたリズムに同期することを強いられるというのは、その後に待ち受けているツアー生活のスタイルについても当てはまる。誰かが決めたタイムスケジュールに合わせて、不自由を乗りこなしながら演奏を続けなくてはいけない。
打ち込みビートに合わせて演奏するスタイルが、ツアー生活のメタファーになっているのが面白かった。
② 秋。音楽が鳴り止んでもレコードが回っているところ
夕食のテーブルで口論になるシーン。
気まずい雰囲気を強調するように静寂が訪れる。
音楽が鳴り止むのは、自分の中に描いていた夢やビジョンの行き詰まってしまうことの示唆だと思った。
でも、円盤は回り続けていた。2人の溝が埋まらないまま、生活が続くことを雄弁に語るみたいに。
せつないなぁ
③ 5年後の冬。ピアノに向かって「1, 2, 3, 4」とカウントを取るところ
②で書いたように、音楽の停止を夢やビジョンの行き詰まりと捉えれば、反対に自分なりの合図で演奏を開始するシーンは、自分の描いた人生が動き出していくことのメタファーとして解釈できる。
それが、ラストの直前にセブがさりげなく唱える「1, 2, 3, 4」だと思う。
自分のタイミングで、自分が決めたBPMで人生が動き出していく瞬間だ。
「セッション」での「1, 2, 3, 4」というカウントは、フレッチャーの鬼指導の象徴として (ビンタとセットで)登場していた。
一方「ラ・ラ・ランド」では、セブが自分の場所で、自分のリズムで、自分の人生のための音楽を鳴らす合図としてカウントが発せられた。本作のシナリオにはミアとセブが結ばれない切なさがあるけど、それぞれ自分のやりたいことを追いかけられるってすごく素敵じゃない? という見方もできる。
ミアは役者らしく、含みのある表情で振り返って立ち去った。
セブはミュージシャンらしく、バンドのメンバーと呼吸を合わせ、カウントを取って演奏を始めた。
それぞれすごくカッコよくて、良い終わり方をするポジティブな作品だと言えるんじゃないかなと思う。
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ちなみに映画の内容とは関係なく、公開初日のことを思い出していた。
2017年2月24日 (Fri)がラ・ラ・ランドの公開初日。この日、世間ではプレミアム・フラデーが初めて施行されるということで「早く退社して飲みにいくんじゃね?」という空気が職場で醸成されていた。
でもでもこの日、ほかにいろんなイベントが被りまくっていた。
- 小沢健二、Mステ出演
- 村上春樹新刊「騎士団長殺し」発売
- ジェイムス・ブレイク大阪公演@なんばHatch ← オープニングアクトがD.A.N!!
- 大森靖子 vs. DAOKO 対バン@心斎橋BIG CAT
- サニーデイ・サービス & トラッシュキャン・シナトラズ 対バン@梅田クラブクアトロ
- そしてラ・ラ・ランド。
ライブ観に行くとしたら大阪に出る身なので体がいくつあっても足りんじゃないかと思ったが、結局ジェイムス・ブレイクを選んだ。とてもよかった。そんな風にイベントありまくりなので、少なくとも会社の飲み会に行ってる場合なんかじゃなかった。早めに退社してる人もいなかったんだけど。