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好きな映画、音楽について

【ベイビードライバー】母親役スカイ・フェレイラとBABYの生まれた時代のこと

いろいろな方がポッドキャストやツイートでBABYDRIVERについて語っている。僕もこの作品について考えていて書いておきたいことが生じたので記事化。

母親役をスカイ・フェレイラという女優さんがやっているのだけど、この人は2013年にアルバムデビューした歌手。シンセ・ポップとロックが溶け合ったようなドリーミーな雰囲気の曲を出している。
音楽活動以外にもモデル・女優をしているとてもセクシーなレディーだ。

 

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 超かわいい (画像によるけど)。
ちなみにタイトルが圧倒的なインパクトの曲を出している。

 

 

 

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このビッチ感溢れる母親から産まれたBABYが、純粋でいい子なデボラと結ばれるというストーリーラインだけでなんかもうたまらない。

 

スカイ・フェレイラの音楽についていうと、アルバム「Night Time, My Time」では輪郭がぼやけた甘い雰囲気の曲が多い。聴いていると、遠くにある何かを思い出しているような、時間の経過によって風化した景色を見ているような感覚に浸れる。

 

これってBABYが記憶のフィルターの彼方にいる母親を思い出そうとして、ファジーにざらついた母親像を脳裏に結んでいる様が自然に追体験できるようになってるじゃん!! と気づいた。ニクい人選だと思った。

 

ところでBABYが幼いときにiPod (キューブ型パッケージの第1世代のやつ)をプレゼントされていることから、彼の生まれた時代について推察してみよう。

 

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初代iPodがリリースされたのは2001年。プレゼントをもらったときには3歳前後くらいの子に見えたので、生まれを1998年と仮定。するとBABYが8歳頃のときにYouTubeがスタート (2006年)し、10歳あたりでSpotifyがスタート (2008年)している、そんな時代を生きてきた子ということになる。

 

(※劇中のスカイ・フェレイラが本物のスカイ・フェレイラだとすると、スカイ・フェレイラは1992年生まれなので10代前半に出産したことになってしまう。そこにリアリティは求めないことにしよう)


BABYがティーンになる頃には、ネットワークにアクセスすればジョンスペだってダムドだってクイーンだって聴き放題な時代に世界は突入していた。お気に入りのiPodに音楽を入れて聴く以上、PCにインポートするためにCDを買うなり借りるなりしてはいたはずだけど、探求するならネットが便利なツールになる時代になっていた。だから、彼がロックもブラックミュージックも好きなことに対して「そんな詳しいやついるかwww」とはならなくて、親がミュージシャンともなれば彼レベルの音楽オタクが誕生することは全然不思議じゃない。

 

さらに劇中では彼の聴いていた音楽としてソウルやヒップホップの曲もたくさんかかるけど、彼が思春期を送る2010年代前半〜中盤は、ブラックミュージックが新鮮な勢いと話題性を得てロックファンをどんどん虜にしていく時代だったと思う:

 

2013年、ダフト・パンク「Random Access Memories」がリリースされる。

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2014年、ディアンジェロ「Black Messiah」がリリースされる。

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2015年、ケンドリック・ラマー「To Pimp A Butterfly」がリリースされる。

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……他にもいろいろなアーティストが充実した作品を出してきた。そういうムーブメントの延長線上に、わたしたち観客が生きている現実の2017年があり、実際にブラックミュージックが強い勢いを持っている。

 

僕はもともとロックやテクノが好きだったけど、2010年代には上に挙げたような超話題作が続々と出てくるので段々そっちに興味が湧いてきていた。で、BABYDRIVERという映画において映像とマッチした抜群の快感を放つ楽曲群が「な、ソウルもヒップホップも超カッコいいだろ?」と改めて知らしめてくれた。映画サントラの楽曲のプレイリストをApple Musicで組んで聴くのももちろん、リアルタイムでリリースされる現代のブラックミュージックを聴くのが一層楽しくなった。

そんなきっかけをくれた、いい映画だ。 

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その他気づいた小ネタ (自分で既にTwitterで書いたこととかのまとめ)

  • ベイビーの本名は「マイルズ」であることがデボラからの手紙で明らかになるけど、マイルは走行距離の単位じゃん。流石ドライバーだ
  • テキーラ」のシーンの銃撃戦の後、アジトに戻りドクに「バナナ」という符牒について教えられるとDarlingがウケる〜wwと言って “♪This shit is bananas, B-A-N-A-N-A-S” とグウェン・ステファニー「Hollaback Girl」を口ずさむ。グウェン・ステファニーは、スカイ・フェレイラが影響を受けたアーティストの1人に挙げられているという点でBABYの生い立ちとつながる。
  • 冒頭の「Bellbottoms」では「♪ラッ・ドッ・レ・ファ・レ・ド……」というストリングスのキメが鳴るのだけど、その後アジトのシーンでBABYが聴いている「Egyptian Reggae」では同様の「♪ラッ・ドッ・レ・ファ・レ・ド・ラ〜」というフレーズが鳴る。そしてジェイミー・フォックスが参加する会議シーンの「Kashmere」では音階上がって「♪ドミソラソミド〜 (であってるかな?)」が鳴る、という風に曲間でフレーズがリレーされていく様に選曲されている。超イイ。
  • BABYはベイビーというだけあって、随所で産毛が映るように撮られている (あるいは撮った絵がそう見えるように諧調補正されてるのかな?)。車がプレスされるシーンでは口髭の端の方、デボラとワイン&ダインでディナーするシーンでは頰、あと作戦会議のシーンでは首筋……などなど。観てておもしろい。

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参考: 詳細な楽曲解説として、Jimmie SoulさんのJimmie Soul Radioを聴いて「なるほど!!」とうなずくことがたくさんありました。未聴の方は是非是非お楽しみくださいc(´ω`)p

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