【シング・ストリート】RISSEI PROM PARTYに行ってきたよ
2017年10月9日(月・祝)、京都市内の最高気温は29℃。
元・立誠小学校のイベント「RISSEI PROM PARTY」に行ってきた。
会場に行く前から、鴨川も高瀬川もとても綺麗で良い気分になった。
僕は立誠シネマには行ったことが無かったので、建物自体に入るのが初めてだった。
小学校の校舎を訪れて懐かしさを感じるというよりも、古びない魔法を宿した空間にいるような不思議な雰囲気に浸ることができた。
会場内の様子。
古本・レコード市での買い物に行く前、講堂入り口の物販コーナーを見ていたら映画「シング・ストリート」にも登場するカセットレコーダーが置いてあって「おおー!!」となった。しかもメーカーは任天堂で京都つながりアピールしてる。
ちなみに劇中に登場するレコーダーには「National Panasonic」のロゴが入っていた (ブレンダンの部屋にあるやつ)。あれも日本製だったわけだ。
いろいろなお店が出店されていたしライブもやっていたけれど、やはりシング・ストリートの上映会が本当に良かった。パイプ椅子に座って、満員の講堂で静かな熱気をみんなで放ちながら映画を共有していた。
ステージ脇の金色のバルーンに観客席が圧縮されて写り込んでいるのをみて「学校で観てるんだなぁ」と実感した。シング・ストリートは1度ブルーレイで観たことがあったけど、劇中と同じように飾り付けた講堂で多くの人と「見届ける」感じになったので一層思い出深い。
あの日観ていて、改めてグッときたシーンについて書いておきたい。そんなわけでここからは映画の感想。
【ダーレンというマネージャー】
僕は10年くらい前に京都で大学生をしていて、学園祭実行委員に所属していた。実行委員という組織の末端として駆けずり回って、計画を練ったり各方面と打ち合わせをしたりフィナーレの企画を練ったり当日にステージを建てたりテントを立てたり物品を運んだりコンセントを配電盤に繋いだりしていた。
そうやって顕現したおまつりに、人がたくさん来てくれて楽しんでいるのを観ると、本当に暖かい気分になった。
ダーレンが、プロムパーティでステージに立って演奏するコナーたちをフロアから見守って楽しそうに笑ってるシーン (口が半開きだったのがまたいい)で、「そう、そこから観る景色って格別だよね」と思った。
いじめられていたコナーに声をかけ、バンドのメンバーを集め、ミュージック・ビデオを撮影することでシング・ストリートというバンドは転がり出して行った。そんなドラマの立役者がダーレンだった。彼がフロアからステージを眺めて満足そうにしている瞬間が、学園祭の裏方をやっていたときの体験と重るようで、すごくじんわりした。
【エイモンという芸人】
大勢で映画を一緒に観る楽しみって、みんなで同じタイミングの笑いを共有するところにあると思う。
ダーレンがンギグにカタコトで話しかけるところも爆笑を誘っていたけど、この映画に暖かい笑いを加えて抜群に面白くしているのはやっぱりエイモンだと思う。
みんなで笑ったポイントを振り返る:
- エイモン、ギターやベースやドラムだけじゃなくて民族楽器みたいなやつまで演奏できて、お前超人かよってなる
- エイモン、無類のウサギ好きすぎて机の下でウサギを撫でている
- エイモン、やはり無類のウサギ好きすぎてバンド名に “ラビッツ” を提案する
- エイモン、冷静に見えて “ The Riddle Of The Model” の展開を練ってるときに「それで、花火がドーン!!」とか想像力抜群でドリーミンな一面を見せる
- エイモン、中間試験などという常識的な概念を気にしているけど気にかけてるのはママだと弁明する
- エイモン、ギター担当なのにギターソロを入れたがるわけでもなくバンド全体の俯瞰に徹していてあんまり目立ちたがらないタイプなのかと思いきや、パーティに女の子がたくさん来るとわかった瞬間に俄然ライブをやる気になる
良さみが深すぎる。
【コナーという少年】
物語の終盤、「JIM」と書かれたボートでダブリンを発つ時、彼の頰が真っ赤になっていたのがとても印象的だった。赤ちゃんかよと思うような色に染まっていた。寒いのだろうし、やはりコイツはまだ本当にガキなんだ、けど本当に勇敢でガッツがあって純粋でひたむきな男の子なんだ、と実感した。
彼はバンド名に “La vie”, フランス語で「人生」を意味する単語を挙げていた。その後のシーンで、登校中に「悲しみと喜びは同じ」について語るときのセリフや、“Drive it like you stole it” の歌詞には “人生” という単語がキーワードとして登場する。
再会したラフィーナに「これが人生よ。15歳の高校生とつるんで〜」と言われた時にはチクリと(カチンと?)と来たのか、ギグについて聞かれても答えようともせずに立ち去ってしまう。
ほっぺたを真っ赤に染めてるような あどけない少年が、そんな風に人生について真剣になるのはやっぱり家庭環境が冷え切っていたせいだと思う。でも、バンドを組んでデモを作り、ラフィーナに届けて行くことで彼の人生に確かな光が差して行く。少年だからこそ信じていられる、まっすぐでアツい夢や希望を追いかけていく。
金もツテも無いイギリスへ、ボートで渡るという冒険がどれほど無謀であっても、世界の神ですらそれを嗤う権利なんて持たない。彼の想いが届いて、嵐の向こうの行きたい場所へたどり着きますように……なんて風に、フィクションの中のキャラクターの未来が明るく開けることを願ってやまなくさせるような、本当にいい物語だった。
---
ということで、すばらしい作品を極上のロケーションで楽しめて素晴らしい映画体験になった。
ありがとう、立誠小学校!!